新しい環境に馴染めない、自分に自信が持てない、人前で話すのが怖い。そんな人間関係で悩んでいませんか?
実は、これらの悩みは「回避性パーソナリティ障害」という状態と関連している可能性があります。
この記事では、回避性パーソナリティ障害について詳しく解説していきます。もしかしたら、長い間感じている生きづらさの原因かもしれません。
自分は回避性パーソナリティ障害に当てはまるのでは?という疑問を抱いている方の参考になれば幸いです。
回避性パーソナリティ障害とは
回避性パーソナリティ障害は、「対人関係」の問題を中心とした精神障害の一つです。
この障害を持つ人は拒絶されることに対する恐れが強く、批判や否定的な評価を極端に恐れます。そのため他人との関わりを避けようとする傾向があります。
この障害に限らず人間なら誰しも、人から拒絶されたり低い評価を得ることは避けたいだろうと考えるかもしれません。
ただ回避性パーソナリティ障害の場合は低い自己評価ゆえに、「自分は人から見て価値がないに違いない」という前提のもと、最初から人との関わりを絶とうとする傾向がみられます。
有病率
日本における正確な有病率は明らかではありませんが、欧米の研究では一般人口の1.5%から2.5%程度とされています。
回避性パーソナリティ障害の症状と特徴
主に目立ってくる症状は以下の通りです。
症状
●批判や拒絶を恐れて、人との関わりを避ける
●親密な関係を持つことへの不安
●自分に価値がないと感じる
●新しい状況や人々を避ける
●社会的な場面で極度に不安を感じる
●自分の能力を過小評価する
日常生活上での特徴
●会社の飲み会や同窓会に誘われても、断ってしまう
●レジで店員さんと目を合わせられない
●電話をかけるのが怖くて、メールだけでやりとりする
●好きな人がいても、告白する勇気が出ない
●仕事で新しいプロジェクトを任されると、不安で眠れなくなる
これらの特徴に心当たりがある方は、回避性パーソナリティ障害の可能性があるかもしれません。
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原因
回避性パーソナリティ障害を引き起こす原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。
遺伝的要因
ノルウェーの双子研究をはじめとした研究で、回避性パーソナリティ障害の遺伝率は約28〜35%と推定されており、遺伝的な傾向があることが示唆されています(Reichborn-Kjennerudら 2007)。
つまり、家族に回避性パーソナリティ障害や類似の障害を持つ人がいる場合、その傾向を受け継ぐ可能性が高くなります。
環境的要因
幼少期の経験も発症に大きな影響を与えます。例えば、
●親からの過度の批判や拒絶
●いじめや社会的孤立の経験
●過保護な養育環境
これらの経験が、他者との関わりに対する恐れや不安を形成する可能性があります。
Meyer & Carver (2000)の研究では大学生を対象に、幼少期の否定的な経験と回避性パーソナリティ障害の特性の関連を調査しており、幼少期の拒絶経験やいじめ経験との関連性が高いことを示しています。
また、遺伝的要因と環境要因どちらの要因も抱えている場合でも回避性パーソナリティ障害を引き起こす可能性があるでしょう。
診断方法と基準
回避性パーソナリティ障害の診断は、専門医による詳細な面談と心理検査によって行われます。
診断基準としては、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)が広く使用されています。
DSM-5による回避性パーソナリティ障害の診断基準(簡略版)
- 批判や拒絶に対する過度の恐れ
- 親密な関係を避ける傾向
- 社会的な場面での極度の不安や抑制
- 新しい対人関係を避ける
- 自己評価の低さ
- 自分の能力の過小評価
- リスクを伴う活動や新しい活動を避ける
これらの症状のうち4つ以上に該当し、日常生活に支障をきたしている場合、回避性パーソナリティ障害と診断される可能性があります。
ただし自己診断は避けるようにして、気になる場合は必ず専門家に相談しましょう。
回避性パーソナリティ障害の治療法
治療には主に以下の方法があります。
いずれの治療法に関しても即効性があるわけではなく、数か月〜年単位など長い目で見たアプローチが重要になってきます。
認知行動療法
回避性パーソナリティ障害の治療に最も効果的とされている心理療法の一つです。
否定的な思考パターンを識別し、より適応的な思考、つまり社会に受け入れられやすい考えや行動に置き換える練習を行います。
例えば「みんな私のことを嫌っているに違いない」という思考があると、どうしても人に対して敵対心を抱いたり、強い恐怖心を持つようになります。
そうなると、その先にあるコミュニケーションはどうしても消極的であったり「自分を傷つける相手こそ酷い存在だ」という思い込みが先に来てしまい、うまくいかなくなってしまうのが当然です。
「人それぞれ好みは違うし、私の考えや性格を好きな人もいるかもしれない」
「人は完璧ではないし、よりよい姿を目指せばそれでいい」
「人が怖い自分も間違いなく自分自身、そのうえでどうするか」
という健康的な考えに少しずつ修正していくことも一つの目標となるでしょう。
グループ療法
同じような悩みを持つ人々と交流することで、社会的スキルを向上させ、自己肯定感を高めることができます。
薬物療法
回避性パーソナリティ障害自体に特化した薬はありませんが、不安や抑うつ症状が強い場合には抗不安薬や抗うつ薬が処方されることがあります。
不眠を招いている場合は、睡眠導入剤を処方されることもあるでしょう。
生活への影響と対策
回避性パーソナリティ障害は仕事や人間関係に大きな影響を与えることがあります。
仕事への影響
能力があっても昇進を避けたり、自分の意見を言えずにストレスを抱え込んだりすることがあります。
「目立つ」と注目を浴びてしまい、自分の欠点が明らかになってしまうかも・・・といった恐怖心を意識的・あるいは無意識的に抱えていることも珍しくありません。
対策
●自分の強みを活かせる職場環境を選ぶ
●少人数のチームや在宅勤務が可能な仕事を探す
●上司や人事部門に自分の特性を伝え、配慮を求める
人間関係への影響
親密な関係を築くことが難しく、孤独を感じやすくなります。
対策
●オンラインコミュニティから始めて、徐々にリアルな交流に移行する
●趣味や興味を共有できる人々と交流する
●自分のペースを大切にしながら、少しずつ関係性を深めていく
まとめ|回避性パーソナリティ障害の方は無理をせず生活していこう
回避性パーソナリティ障害は確かに生きづらさの原因となりますが、決して克服できない障害ではありません。
自分の特性への理解を深めて、適切な支援を受けることで、より快適な生活を送ることができます。
慎重さや繊細さは、時として大きな強みにもなります。
必要なときは専門家の助けを借りながら一歩ずつ、自分のペースで前進していきましょう。