「仕事に行く前、急に胃がむかむかする」
「会社のことを考えただけで吐き気が襲ってくる」

こういった症状がある場合、ストレスが原因になっているケースがとても多いです。

ストレスは様々な身体症状を引き起こしますが、中でも吐き気は代表的な症状の一つとなっています。

しかし、なぜストレスが吐き気を引き起こすのでしょうか?そして、どのように対処すればいいのでしょうか?

本記事では、仕事のストレスによる吐き気のメカニズムや原因、関連する疾患、そして効果的な対策方法について、最新の研究結果を踏まえて詳しく解説していきます。

ストレスと吐き気の関係を理解し、適切な対処法を知ることで、より健康的に仕事に取り組むことができるはずです。

仕事のストレスで吐き気が起こるメカニズム

まずストレスがなぜ吐き気を引き起こすのか、メカニズムについてみていきましょう。

ストレス反応の仕組み

私たちの体には、「ストレス反応」と呼ばれる防御機能が備わっています。

これは、危険や脅威に直面したときに体を守るための反応です。

具体的には以下のような変化が起こります。

  1. 副腎からアドレナリンとコルチゾールが分泌される
  2. 心拍数が上がり、血圧が上昇する
  3. 交感神経の活動が高まり、消化器系の活動が抑制される
  4. 不眠などをまねく

人間は強いストレスを感じると、身を守るために自律神経の1つである「交感神経」の活動を高め、体が興奮状態に入ります。

ストレスに負けないよう心身が闘争モードに入っていると考えてよいでしょう。

ただし、人間の体・心のエネルギーは有限です。

仕事のたびに闘争モードに入ってしまうと、そのうち仕事ではない時間でも緊張状態がとれなくなってしまいます。

そうすると、以下に説明する「吐き気が起きる原因」も引き起こしやすいのです。

吐き気が起こる原因

ストレスによる吐き気は、以下の4つの要因が関係しています。

消化管運動の低下

ストレスにより交感神経が優位になると消化器系の働きが抑制されます。

食べ物がなかなか消化されず胃内に長時間滞留したり、胃の膨満感が増したりするということですね。

そしていつまでも胃が食物を消化できない状態だと、脳が「胃に異常が起こっている」と判断し、胃を守るために内容物をすぐに排出するよう体に命令するわけです。

その結果、吐き気を感じやすくなります。

ホルモンバランスの変化

「ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾールの過剰分泌は、胃酸の分泌を促進します。

胃酸は、胃の内容物を効率的に消化するために必要です。ただ胃酸は胃の粘膜も刺激するため、過剰に分泌すればするほど胃にストレスをかけてしまいます。

胃粘膜は胃の酸性度なども常に監視しているため、胃酸が多い状態だと異常を感知し吐き気を引き起こす信号を送ります。

そのため吐き気や胃痛が起こるというメカニズムになっています。

慢性的な不眠による吐き気

睡眠不足は脳内のセロトニンの活動に影響を与えます。

セロトニンといえばうつ病の発症に関係することで知られていて「幸せホルモン」というとピンとくる方もいるかもしれません。

ただ、セロトニンは気分の調整だけでなく消化管の機能にも関与しています。

セロトニンの活動や分泌レベルが低下してしまうと、消化液の分泌バランスを崩したり内臓感覚を過敏にしたりなど、通常なら感じない軽微な刺激でも吐き気を引き起こす可能性があるのです。

これらの要因が複合的に作用することで、吐き気という症状が現れることを押さえておきましょう。

吐き気の原因となる疾患

ストレスによる吐き気が長期間続く場合、単なる一時的な症状ではなく、何らかの疾患が隠れている可能性があります。

ストレス性吐き気に関連する主な疾患についてみていきましょう。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、消化器に明らかな異常がないにもかかわらず、上腹部に不快感や痛み・吐き気などの症状が現れる胃腸症です。吐き気以外には、

●食後のもたれ感

●早期満腹感

●上腹部の痛みや灼熱感

などが起こります。

ストレスは胃の運動機能や知覚機能に影響を与え、機能性ディスペプシアの症状を引き起こすことが示されています。

過敏性腸症候群

吐き気や腹痛、便通異常を主症状とする消化管障害です。

ストレスとの関連が強く、症状の悪化にストレスが大きく関与していることが知られています。

●腹痛

●下痢や便秘(または両方の繰り返し)

●腹部膨満感

などの症状が出現します。

自律神経失調症

自律神経系のバランスが乱れることで様々な身体症状が現れる状態を指します。

ストレスは先述したとおり自律神経である交感神経・副交感神経のバランスを崩してしまう大きな要因の一つです。

吐き気以外にも、

●めまい

●動悸

●頭痛

●睡眠障害

●強い倦怠感

などあらゆる症状がみられます。

ただ、自律神経はさまざまな臓器を担当しているため、上記に挙げた症状はほんの一部です。また自律神経の異常を正確に測定する方法はないため、

見過ごされやすい障害であることも念頭に置く必要があります。

これらの胃腸障害を引き起こす疾患の他にも、精神疾患・障害を引き起こしている可能性も否定できません。

落ち込みや不安・恐怖心など精神的な症状のほうが強く出てきていることで吐き気があまり問題視されないことがありますので、症状がある場合にはしっかり伝えるようにしましょう。

改善方法

以下に、吐き気に対する一般的な治療法を解説していきます。

薬物療法

吐き気の根本的な原因を特定し、それに対する治療を行います。

●胃炎:胃酸分泌抑制薬

●前庭神経炎:ステロイド薬

●心因性の吐き気:抗不安薬や抗うつ薬

●吐き気に対して:吐き気止め

などになります。

慢性的な胃炎の状態になると吐き気を催しやすくなり、吐き気が続くと不安感が高まりやすくなりがちです。

しかし、その不安がまた吐き気を引き起こす・・・といった悪循環の原因にもなり得ます。

そういった場合は、慢性胃炎の治療に加え不安を抑えるような投薬も行う、といったケースもあるでしょう。

また、ストレス性の吐き気に対して吐き気止めが処方される場合もあります。

認知行動療法

ストレスが個人の考え方・物事の捉え方の認知のゆがみによって引き起こされている場合に、認知行動療法が治療法として選択される場合があります。

同じ物事が起きても、捉え方も同じとは限りません。

同じ仕事を任されてもチャンスとして積極的に奮闘する人もいれば、大きなプレッシャーに押しつぶされそうになる人もいるでしょう。

物事・ストレスに対する考え方を変え、適切に対処するための心理療法といえるでしょう。

リラクセーション技法

認知行動療法と共にカウンセラーなどから伝達されることのある技法です。

深呼吸法、漸進的筋弛緩法、瞑想などがあります。自律神経系のバランスを整え、吐き気を軽減する可能性があります。

労働環境が問題である場合

労働環境が原因で吐き気に悩まされている場合、段階的なアプローチが必要です。

まず専門機関に相談し、自分のケアを優先しましょう。次に信頼できる同僚や上司に相談し、問題の共有と解決策の模索を行います。

しかし労働環境が問題になっている場合、「そもそも相談できるような環境下にない」といったこともありえるでしょう。

またストレスを訴えても改善が見られない場合などでも、人事部門や産業医に相談するステップに進みます。

最終的に、労働環境の改善が見込めない場合は、異動や転職も視野に入れることが重要です。

各段階で状況を評価し、必要に応じて次のステップに進むことで、問題の解決を図りましょう。

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まとめ|仕事のストレスで吐き気が出たらチェックしよう

仕事のストレスによる吐き気は、単なる心の問題ではない場合があります。

上記のとおり、ストレスホルモンの分泌増加・自律神経系の乱れ・消化器系の機能低下など様々な要因が絡み合って吐き気を引き起こしている可能性があるからです。

ストレス管理技法の習得、生活習慣の改善、必要に応じた医療機関の受診など、総合的なアプローチが重要です。

自分の体と心のサインに耳を傾け、早めの対策を心がけましょう。