毎日の仕事に追われ、疲れ果てていませんか?「もっと頑張らなければ」と自分を追い込んでいる方もいるかもしれません。
日本人は特に頑張りすぎる傾向があります。「頑張り」や「我慢」を美徳とする文化的背景があるからですね。
いろいろな経験から、「もう仕事は頑張らないと決めた」「もっと心を豊かにしたい」という方も少なくはないでしょう。
そういう想いを抱えているときが、努力しすぎるループから抜け出すチャンスです。さらに意識的に「頑張らない」ことは、ストレスを減らして生産性を上げたり、自分を客観的に見つめる余裕を生むことができるとても合理的な考え方なのです。
この記事では、「頑張りすぎる」働き方や考え方から少しだけ距離を置いて、「あえて頑張らない」という働きかた・考え方がどういった良い効果をもたらすのかをお伝えしていきます。
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「頑張りすぎる」ことの危険性
まず、なぜ「頑張りすぎる」ことが危険なのか心理学の観点から見ていきましょう。
燃え尽き症候群のメカニズム
「燃え尽き症候群」という言葉を聞いたことがある方は多いかと思います。
これは、長期間のストレスにさらされることで、心身ともに疲れ果ててしまう状態のことを指します。
身体も動き続ければいずれ動けなくなってしまうように、心にもエネルギーがあって使い続ければ動けなくなってしまうのです。
燃え尽き症候群は以下の3つの症状でなされます。
- 情緒的消耗感:仕事に対する情熱や意欲が失われる
- 脱人格化:同僚や顧客に対して冷淡になる
- 個人的達成感の低下:自分の仕事に価値を見出せなくなる
これらの症状は、仕事を頑張りすぎることで徐々に進行していきます。
特に完璧主義の傾向がある人や、周囲の期待に応えようと必要以上に頑張る人は、燃え尽き症候群のリスクが高いとされています。
たとえば自分の能力以上のことを要求され続けたり、自分の能力で無難にこなせることでももっと質を高めようとして自身でハードルを上げ続ける、ストイックに仕事の価値を追求する人もリスクが伴うでしょう。
さらに、自分のやりたいこととは少し異なる業務内容であったり、転職や急な配置転換で慣れない仕事に携わるなどでも必要以上に心のエネルギーを消耗してしまい、同様に心の体力が尽きてしまう可能性があります。
慢性ストレスが心身に与える影響
「頑張りすぎる」ことは、慢性的なストレス状態を引き起こします。
さらに、
- 心臓病や高血圧などの健康問題を引き起こす
- 不安障害やうつ病などのメンタルヘルス問題に波及する
- 記憶力や集中力が低下する
- 免疫システムが弱くなる(感染症や病気にかかりやすくなる)
などといった状態を招くこともあります。
つまり仕事を頑張りすぎることは、短期的には生産性を上げるかもしれませんが、長期的には逆効果になる可能性が高いのです。
完璧主義の罠と自己評価の低下
「頑張りすぎる」ことと密接に関連しているのが、完璧主義です。
カナダのヨーク大学のゴードン・フレットらの研究によると、完璧主義には以下のような問題点があります。
- 非現実的な高い目標を設定してしまう
- 失敗を過度に恐れる
- 自分の成果に満足できない
これらの特徴は自己評価の低下につながり、「より生産性を追い求めるがゆえに」逆にモチベーションの低下や生産性の低下を招いてしまうことにもなりかねません。
以下の記事も合わせてご覧ください。仕事のストレスがやばいときの対処法とは?ストレスが限界な人のサイン
「頑張らない」ことのメリット
では「頑張らない」ことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
「頑張らない」という単語だけでも怠けているような感覚に陥りそうですが、ここでは意識的に頑張らないことを目指すという点を念頭に置きましょう。
ストレス軽減と心身の健康維持
まず得られるのがストレスの軽減です。
アメリカの国立衛生研究所の調査によると、適度なストレス管理は以下のような効果があります。
- 心臓病のリスク低下
- 免疫システムの強化
- 睡眠の質の向上
- 気分の改善
つまり「頑張らない」ことは、単に楽をするということではなく自分の健康を守る“積極的な選択”ともいえるでしょう。
創造性と問題解決能力の向上
創造性や問題解決能力も向上する可能性があります。
カリフォルニア大学バークレー校のメラニー・グリーンバーグらの研究によると、適度なリラックス状態は以下のような効果をもたらします。
- 柔軟な思考の促進
- 新しいアイデアの創出
- 直感的な問題解決能力の向上
退屈な時間やぼーっとしている時間に、人間のイメージ力というのは最大限に発揮されるという話を聞いたこともあるかもしれません。
常に全力で頑張るのではなく、時には力を抜くことで良いアイデアが浮かんだり、違う視点での気づきが得られたり、仕事や生活の質が向上する可能性があるということですね。
「頑張らない」ためには具体的にどうすればよいのか
ここまで、「頑張らない」ことのメリットについて見てきました。
「もう仕事を頑張りすぎてもしょうがないのは分かったから頑張らない」と既に感じている方もいるかもしれません。
ただメリットを見るだけではなかなか実践にはつながりにくいですよね。
それに、もともと「何もかもを頑張りすぎる」傾向にある方であれば、意識的に頑張らないとはどういう感覚なのかも分からないといったケースもあるでしょう。
もう頑張らないと決意したのに、無意識に「努力で何とかする」という癖が治せない場合もあるかもしれません。
では、具体的にどのように「頑張らない」働き方を実践すればよいのでしょうか?
完璧主義からの脱却
「がんばらない」働き方を実現する上で大きな障害となるのが、完璧主義です。
「もう頑張らない!」と思っていても、根本にある完璧主義が邪魔してしまうこともしばしばあります。
完璧主義そのものを変えようとしてもなかなか変わらないので、まずは自分にとって「十分に良い仕事」とは何か定義を見直してみましょう。
- 100%の完璧さよりも、80%の達成を目指す
- 自分の心身を守ることも「良い仕事」の一部
- 努力でどうにかするのではなく効率よく出来るシステムを作る
完璧主義というのは、いわば自分を犠牲にする働き方ともいえます。
しかし、自分の身を守りながら仕事をすることも「良い仕事」のうちではないでしょうか。
期限までにひたすら時間の限り追い込むとか、残業を毎日続けるとか、それが達成感に繋がるのであれば良いですが大抵は疲弊のほうが大きくなってしまっています。
自分の健康や、豊かな生活を手放すはめになるかもしれません。
「完璧な仕事」から「十分に良い仕事」へ
人間がロボットではない以上、体と心のエネルギーは確実に消耗しますし「完璧」というのはなかなか難しいことです。
「完璧」は存在しないと思ったほうがよいでしょう。完璧な仕事というのは、前述のとおり完璧であるはずなのに失うものも多いのです。
「完璧な仕事」ではなく自分の健康にも配慮した「十分に良い仕事」ができるビジネスパーソンを目指す、と良いでしょう。
社会的プレッシャーからの解放
「頑張らない」働き方を実践する上で大きな障害となるのが、社会的プレッシャーです。
人の目はどうしても気になりますよね。そういったとき、どのように対処すればよいでしょうか?
他者との比較を避ける心理テクニック
他者との比較は、不必要なストレスの原因となります。
以下のような心理テクニックを試してみましょう。
- 自己比較:過去の自分と比較し、成長を実感する(小さなステップでOK)
- 選択的注目:他人の長所ではなく、自分の長所に注目する
- マインドフルネス:「いま」の瞬間に集中し、比較思考から離れる
これらのテクニックを実践することで、他者との不必要な比較を避けることができます。
また、昨今はSNSの普及で一つの物事に対しても多くの他者の意見が目に入りやすくなっています。メンタルヘルにも関わるので、ケースによってはSNSから遠ざかることも必要です。
部署・組織が問題である場合
企業は労働者を様々なリスクから守り、安全で健康的な職場環境を提供する義務があります。
これを怠る職場というのは、労働安全衛生法を守っていないことになります。
この場合は個人の問題とは別に考える必要が出てくるため、必要であれば転職を考える・あるいは配置転換などを検討してもらうよう働きかけましょう。
「頑張らない」ことの真の意味
この記事を通じて、「頑張らない」ことの真の意味が見えてきたのではないでしょうか。
それは決して怠けることではなく、むしろ
- 自分の限界を知り、尊重すること
- 効率的に働くことで、無駄な努力を省くこと
- 仕事と生活のバランスを取ること
- 長期的な視点で自分の健康と本当の生産性を維持すること
といえるでしょう。
皮肉かもしれませんが、さまざまな研究結果では「完璧を目指し頑張る」ことをやめることで真に質の高いパフォーマンスが得られるということを示しています。
すでに、いろいろな経験を経て「もう仕事は頑張らないと決めていた」という方にとっても、この記事が後押しになれば幸いです。
まとめ|仕事を頑張りすぎないことはたくさんのメリットがある
ここまで「がんばらない」働き方について、さまざまな角度から見てきました。
この新しいアプローチは、一見すると従来の価値観と相反するように思えるかもしれません。しかし、長期的な視点で見れば、むしろ生産性と幸福度を高める賢明な選択なのです。
もちろん、すぐに実践できなくても構いません。
少しずつ自分のペースでまずは「のんびり」試してみるということが、頑張りすぎる思考からの脱却の第一歩といえるでしょう。